2020年04月09日 読書だより
「人間は、生まれたときからずっと連続して生きているわけですから、
認知症になったからといって突然、人が変わるわけではありません。
昨日まで生きてきた続きの自分がそこにいます。」
長谷川和夫さんの著書『ボクはやっと認知症のことがわかった』(KADOKAWA)
から引用した言葉です。長谷川先生と聞くと医療福祉業界では、認知症の診断の
物差しとなる「長谷川式スケール」の開発を行った先生として有名だと思います。
認知症の専門医が、自らも認知症となりまとめたのがこの著書です。数多くの認知
症の方に寄り添い、かつご自身も認知症になられた立場からの発言なので、この著
書に詰められた言葉の数々にはとても説得力があります。学ぶべきことは多いので
すが、一方で著者の前向きな生き方そのものは、認知症にかかわる人々への励まし
にもなるでしょう。一般の方への認知症に関する理解を広げる入門書としてもおす
すめです。長谷川さんは、認知症の本質とは「暮らしの障害」といいます。それま
で当たり前にできていた暮らしができなくなっていく。ただ、周囲のサポートや接
し方で、そのできなさの程度は軽減できる。人生100年時代。「認知症」への正確
な知識と理解は、これからの時代、すべての人々に求められています。